「カッパを英語にしてください」。
セミナーは予想外の話題から始まった。それまで、馬、ウサギ、象などの動物の英語名を尋ねられた受講者たちが、一斉に頭をひねったところで、氏は一言。
「レインコートですよ」

誤解は誰にでも備わっているということを、実例で示したというわけだ。
今回のセミナーで、氏が最も強く訴えたかった点も、「『クチコミ』は、ユーザーの認識を解くための、最適なツールである」ということだった。
「コミュニケーションギャップを取り除くために、Q&Aサイトを作った」と言う兼元氏。同社の成長もユーザーからの改善提案に支えられたことから、『クチコミ』の信頼性を確信したそうだ。同社の軌跡や事業紹介とともに語られた内容は、そのまま、Q&Aサイトの特色や可能性を示すものである。
また、既存の検索エンジンに対するQ&Aサイトの優位性として、「知りたい情報にダイレクトにアクセスできる」というユーザーとしては最大のメリットがあることも説明した。

こうした背景を元に現況をみると、ネット上で影響力がある人（タレントや有名人に限らず、人気があるクチコミ回答者も含む）の発言は、テレビ広告以上の効果・影響をもたらす。また、ユーザーの消費行動においても、「ネットで情報を調べる」という過程が不可欠であり、50％超のユーザーがクチコミに対して信頼を寄せていることなども、データを明示しながら解説した。

こうした状況の中、ウエディングにおいては、クチコミをどのように利用すべきか。

「クチコミで失敗しないためには、リスクコントロールが不可欠」と、兼元氏は解説する。リスクコントロールとはすなわち、有名人のブログでもしばしば話題に上る「炎上」を防ぐということだ。 氏は、ネットという媒体には、たくさんの人目にさらされて、真剣勝負をする覚悟が必要だと指摘した。だからこそ、「やらせをすると見抜かれる（その結果、不信感・炎上につながる）」。そして、リスクに対する最上の防御策としては、「表現の自由と、倫理に対するブレない信念を持ち、意図と目的を明確にすること」を挙げた。

クチコミの進化は、マーケティング環境の変化でもある。仮に「辛らつ・マイナス・ネガティブな意見」がクチコミに書かれたとしても、真摯に対応することによって、改善に結びつくだけでなく、新たなプラスのクチコミを招くことになり、リピーターを獲得する可能性があることも、データによって示された。

ウエディング・クチコミ媒体については、まだ始まったばかり。しかし、先回りして対応策を講じ自社のスタンスを固めること、ユーザーから情報をもらうつもりで取り組むこと、いざというときの情報網を確保しておくことにより、クチコミを味方につけることは可能である。
「よいサービスと感動をお客さまに与えられるよう、取り組んでほしい」。セミナーはそう、結ばれた。

なお、セミナーの終了後には、『Q&Aで変わる会場探しの未来』と題して、兼元氏とジョイジョイ(株)事業統括マネージャーの舘田智氏によるトークセッションが行なわれた。

（取材・文 北 千代）