【共催】株式会社オータ パブリケイションズ、『ぐるなびウェディング』(ジョイジョイ株式会社)

WBA Wedding Business Academy

ウエディング・ビジネス・アカデミー  「ウエディング・ビジネス・アカデミー(WBA)は、「ブライダル業界のサポーターとして皆様を応援していきたい」という共通の思いのもと、株式会社オータパブリケイションズと、インターネットウエディングのポータルサイト『ぐるなびウエディング』を運営するジョイジョイ株式会社が共催するセミナーです。

「富士屋ホテル300組の軌跡」・年間50組から300組超へ、ブライダル大変革のつくり方 ・ゲストの心、スタッフの心を掴むブライダルコンセプトと理念・2名体制から10名体制へ、お客様とのリレーションを築く組織づくり・総支配人からフロントスタッフまで全館挙げてのカップル受け入れ態勢づくり・広報手法、新規来館増、新規接客成約率UP、獲得組数UP、施行オペレーション

富士屋ホテル ブライダルマネージャー 真野浩明氏「富士屋ホテル 300組の軌跡」婚礼組数の増加はおろか、前年の組数を維持することすら難しい状況。この不況下において、数年前から改革に着手し、婚礼組数を倍増させてきた富士屋ホテル。この改革の原動力である富士屋ホテル・ブライダルマネージャーの真野氏にその軌跡を語っていただきます。

真野浩明氏
明確かつ高い目標設定で人を動かすことから始まった

婚礼宴会課 課長 統括マネジャー 真野浩明 氏

不況、晩婚化、非婚化といった逆風の中で、富士屋ホテルがいかにして業績を大きく伸ばしたかを聞けるとあって、会場には過去最高となる200人の参加者が集まった

セミナーを「一人の力では婚礼の仕事はできない、すべては総合力で決まる」「そのためには現場とトップまでがブライダルに対する思いが一緒でいないとよい結婚式は作れない」との言葉で始めた、真野氏。セミナーの要所では必ず、「ブライダルは人だ」という言葉が挟み込まれた通り、ブライダル部門の成長と躍進は、そのまま「富士屋ホテルのスタッフ一人一人が、どのように力を合わせて取り組んできたか」という歴史でもあった。

「安藤総支配人のもと、やりがいを与えてもらい、ブライダルチームはやる気に満ちている」と氏は言う。現在、婚礼宴会課は10人のスタッフで運営されている。しかし2003年、真野氏がマネジャーに着任した当初は、ブライダル部門は宿泊課の係りといったポジションであり、氏を含む2人体制から始まった。

着任してすぐに、氏は「楽しく本気でプラス思考」「チームワーク力」「全員で100組」という、三つの目標を掲げた。明確な目標を掲げることで、スタッフ間の意思統一を図ったのだ。

“不況をチャンスに変える”という攻めの姿勢で、当初の予想を大幅に上回るような高い数値目標を掲げ、氏は日ごろから繰り返し口に出した。これにより、プランナーのみならず料飲、調理やゲストリレーション、レセプションなど、ほかの部署のスタッフを巻き込み、意識の改革と横のつながりに注力すること。富士屋ホテル安藤総支配人の下“ホテル全体で一つの婚礼”という同じ目標に必死に向かうことに成功した。

一般に、経営者、現場トップ、プランナーはそれぞれ、異なるスタンスや考え、目標を持っていることが多く、経営者や現場トップはそのことを認識していない企業があまりに多い。特にブライダルマネジメントには、その差異を積極的に埋めていく努力が必要であり、“人”という軸から外れてしまうと成り立たないと、真野氏は強調した。
コンセプトメイクやターゲティングはマーケット分析を基礎とする

着任当初から積極的に取り組んだのは、徹底したマーケット分析だ。初年度に真野氏が集めたデータは、1000ページにも及ぶものだったという。内容は、ブライダルマーケットの現状、富士屋ホテル周辺エリアの現状など。表に出ていないデータで集められるものはすべて集めたという。

「データ分析は先を読める戦略であり、皆で共有し合うことで威力を発揮する」と、現在も毎月30ページにわたるデータ分析表を作成し、各セクションに配布している。

「マーケットを分析した上で、自社はどうすれば勝てるかを考える」という方程式に基づき、分析結果を検討し、富士屋ホテルの“強み”を考え、ターゲットや打つべき施策を次々と明らかにしてきた。

そして「ターゲットはどんな人たちなのか」を、プランナー全員がパッと即答できるまで浸透させる。同時に消費者の動向には常に敏感に対応し、センスよく数々の改善に生かしている。

真野氏は、「マーケティング、データ収集、テーマとコンセプトまで確実なものが出そろえば、あとは軸がブレず、コンセプトに沿った接客や広報、セールス、施策から戦略に至るまで展開していくのみ」と結論付けた。

短・中・長期戦略は目標への逆算から今、なすべきことに全力で取り組む
戦略の立案については、目標を立て、それまでに今なすべきことをシステム化していくことから始めたという。接客においての例を出し、「数百万円の車を買うときと同じプロセスを考え、各段階に対して手を打っていった」

ほかの講師陣と違うであろう着目点は、お客さまは買う際には「『誰も不運そうな人や冷徹な人からは買いたくない。できれば一生懸命で幸運そうな人から買いたい』と、最終的に考えるだろう」という点だ。どんな接客をすべきかおのずと答えは出ていて、さらにスタッフに接客ロールプレイングを繰り返すこと。

また、キャンセルされた場合ほど“宝物”となる。「キャンセル理由」として、何がいけなかったのかを聞き出し、不安材料を取り除いていく努力の重要性も語られた。

戦略そのものは、すぐに実行して効果が出る「短期戦略」、経費や人件費との折り合いをつけて実行する「中期戦略」、そして大切な経営資源である「人」の育成にもかかわる「長期戦略」に分け、取り組んでいる。

短期としては、真野氏は常時100個程度のアイデアをストックしておき、総支配人に相談し、実行に移していくことが肝心という。アイデアはタイミングを見計らったり、マイナス要因を検証などと悠長なことをしているうちに取り残されるため、思いついたら全力でそれに取り組み、いかにすれば成功するかを考え即実行することが重要であることが、強調された。

いくつか例を挙げた中で、すぐに実行できるアイデアとして、商品説明を網羅させるアイテム、○×式の「打ち合わせチェックシート」などは、参加者の参考になったことだろう。プランナー個々の判断でセールスしたり、されない商品が出てくることは望ましくない。このシートはセールストークのもれを防ぐために作られ、大幅な単価アップが実現した。

現在は、富士屋ホテルのブライダルは高品質というイメージから、全国でも有数の高単価で推移している。こうした「気付き」は、新人の接客に同席することやプランナーとの面談を重ねることで得たというヒントも明かされた。

人材については短期的な戦略を投入しつつ、長期的な視野に立って育成している。特にブライダルに重要なのは、「プラス思考のプランナー」。富士屋ホテルのこの5年間は、やってみる前に「できない」と答えてしまう「常識や観念にとらわれたマイナス思考」を、プラス思考に転換していくための試行錯誤の時間だったとも言えそうだ。

また、戦略を効果的に実行させるためのマネジメント術についても、さまざまなアイデアが披露された。中でも特に重要なのは、「トップセールスマン」となるマネジャー自らが一生懸命かつ楽しんで接客を行なう姿を見せることが、部下のモチベーションにもつながるという経験談だろう。

真野氏の言葉の中に「ブライダルは人のモチベーションのコントロール次第で、成約率や組数、売り上げにも影響が出る」とあったが、まさに真をついていると言えるだろう。

真野氏は、接客に限らず、第一線の現場で日々起こる問題への対応など、何事も率先して取り組んできたが、その姿を見せるうちに、プランナーたちもチームとしての感覚や「自分たちにもやらせてください」と、どんどん手を挙げるようになった。積極性が自然に結束につながっていったという。その姿勢はやがてホテル全体から協力店全体へと広まっていったのだ。

「格式」という従来イメージを広報で脱ぎ捨てた意義とは
広報戦略についても、「富士屋ホテル」独自の方針が貫かれている。特に「多くの人の目にとまることが広報では最も重要」という、広報活動の根本に立ち返った発言には、ハッとさせられた方も多かったのではないだろうか。

真野氏は、広報においては「速さ、緻密さ、センス」を重視し、加えて“テーマ”をはっきりと打ち出すことに専心してきた。特に富士屋ホテルには「格式」や「伝統」というイメージが先行しているため、5年前の段階ではブライダルのターゲット層で、実際に同ホテルへの新規来館者数はそう多くはなかった。

「伝統や格式」という個性は重要だが、その面ばかりを強調すると、「一般人はお断り」という高飛車で反比例の広報になってしまう。そう考えた真野氏は、「伝統や格式は、訪れたお客さまが感じることであって、自分たちでアピールすることではない」と判断。ブライダルのテーマとしてまったく逆の発想から「ホームスイートホーム」を打ち出し、コンセプトである「ぬくもり」や「わが家」といった“人間の本質をつく”イメージ戦略を前面に押し出していった。

その結果、富士屋ホテルの偏ったイメージにとらわれない、新たな顧客層にまで幅を広げ、ホテルへの来館客数増に成功した。テーマとコンセプトを、時代に反映した翌月から新規来館数は倍増していった。

「媒体によって提供する情報は変えなければならないが、イメージやコンセプトは決してブレてはいけない」。それをコントロールするためには、マネジャーが自ら広報にかかわることが必要だと説いた。

また、広報とはその企業の経営そのものであり、広めたイメージを、全社体制で具現化することも重要だとの話もあった。

全館体制の接客で五感に訴える営業を
来館時の営業セールスや接客についても、微に入り細にわたり、真野氏の取り組みが語られた。真野氏はプランナーたちに、「一生懸命にやっている姿を見ていただき、誠実にやっている自然体の自分を好きになってもらおう」と言い続けてきたという。格好のよい接客は捨て去り、とにかく“熱意ある接客”を指導してきた。ブライダルが「実態のない商品」であるからこそ、プランナーの「人となり」が重要な商品になるからだ。

実体のない商品に、「感触」を持ってもらうためには、来館時のご案内の際に五感に訴えることが重要で「富士屋ホテル」のブライダルを感じ取ってもらう努力をしている。

最初の来館時にカップルが、「自分たちをもてなすために準備して待っていてくれた」と感動を覚えれば、同じように列席者をもてなしてくれることも想像できる。そのために、下見といえども全館体制での接客を徹底した。その結果、「思い描いている結婚式がかなうのでは」という思いを、お客さまに持っていただけるようになってきたという。

人・モチベーション・戦略・接客・広報などさまざまな“好循環”が、ますますその威力を増していくのである。

今回のセミナーで解説された内容はここまでだが、「ブライダルは人だ」と信念を貫く真野氏の基本姿勢や戦略への話題は、1日~2日では尽きない。この倍量にも及ぶようだ。セミナー終了後には、「予定の時間内ではすべてを話しきれなかった」という真野氏に、「第2弾を開催してほしい」との声が次々に寄せられた。

参加諸氏は、富士屋ホテルの動向に、引き続き注目するとともに、今後のセミナー開催にも期待を寄せていることだろう。

(取材・文 北 千代)
真野浩明 富士屋ホテル ブライダルマネージャー

1973年7月生まれ。96年大学卒業、同年、富士屋ホテル(株)入社、総務課、ハワイ研修制度1年半、料飲課、新人トレーナー、キャプテン、副主任、(社)日本ソムリエ協会ワインエキスパート認定、ソムリエ認定。03年宿泊課、レセプションマネジャー兼ブライダルマネジャーに就任、主任、係長を経て、以降一貫して同ホテルのブライダルにマネジャーとして携わる。09年婚礼宴会課課長昇格、統括マネジャーに就任。BIAマスターオブブライダルコーディネーターファイナリスト。近年は、箱根小田原ブライダル協議会の立ち上げにも奔走し、副事務局長として当該エリアの活性化にもまい進している。

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ブライダル事業部 セミナー担当 桑田 kuwata@ohtapub.co.jp
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