モバイル・サイトの現状を、河野氏にグラフなどの豊富なデータを基に分かりやすく解説していただいた
今回の河野氏のテーマは三つ。最初のテーマは「ケータイのこの10年」。携帯電話を巡る環境が激変したこの10年について、振り返った。
今やすっかり生活に定着したかのように見えるケータイだが、i-MODEが登場してようやく10年目。ケータイの普及が飛躍的に進むと同時に、モバイル・サイトもどんどん拡張し、市場にも変化が現れてきている。
「CD販売枚数が驚くほど激減した一方で、ケータイからのダウンロード数はCD販売数をはるかに上回る」と河野氏は事例を挙げた。さらに、ケータイが個人レベルでのインターネットの普及に貢献したことなども、グラフとともに解説された。
結論として、画面の小ささや入力の不便さ、通信速度の重さなどの諸問題を残しながらも、今やケータイの果たす役割の大きさは、無視できないものとなっている。
二つ目のテーマは『続きはウェブにない?!』と題された、ケータイの広告戦略について。電車内の広告にURLが書いてあっても、ケータイサイトが用意されていないために、消費者の関心は企業サイトまで届かないとの現実が紹介された。
今や「検索」は消費行動に欠かせないアクションの一つ。消費者が「検索したくなる」瞬間に立ち会うことが多いモバイル・サイトの重要性が再確認された。
三つ目のテーマは、『企業サイトの重要性』。企業サイトの位置付けについて改めてとらえ直すとともに、その重要性について多角的に迫った。
ブックオフオンライン(株) 取締役 河野 武氏
モバイル・サイトや企業サイトの重要性を認識したはよいものの、広告や広報と比較してのメリット・デメリットをつかんでいなければ、企業サイトを生かせない。広告も広報もそれぞれにメリットがあるが、持続力の点では自社メディアが優位に立つ。
そこで、自社メディアとニアイコールな存在のキャンペーンサイトは、どのようにあるべきかが、解説された。
河野氏によれば、自社サイトは、「作ればよい」「あればよい」というわけではない。顧客との関係を中・長期的に継続するのが、その役割だからだ。
つまり、自社サイトがビジネスのために役立つ=売り上げや利益に貢献するためには、消費者に繰り返し使ってもらわなければならない。それには、「便利」「面白い」「ないと困る」といういずれかの要素を満たす必要がある。
河野氏は、企業が自社メディアを構築する意義が、広告や広報とは異なる位相に求められることを示した上で、今後は広告費の一部から適正に配分することが必要だと説いた。
最後に河野氏は、電車の中でケータイを凝視する若者の姿がプロジェクターに映し出され、そのケータイ(=モバイル・サイト)の中に、読者が求めるサイトとして自社サイトがあるのかどうか、を再び問う言葉で講演を結んだ。
(取材・文 北 千代)